わが国では高齢者人口の占める割合が急速に増加しており、共愛会病院でも高齢者が患者の多くを占めています。 高齢者の疾患の多くは、高血圧・糖尿病といった生活習慣病であり、認知症・廃用症候群といった加齢に伴う老人症候群です。 これらは治癒させることの困難な慢性疾患であり、長期管理が主な治療となっています。 よって高齢者医療のポイントは、病が1つや2つあっても「元気で長生き」のお手伝いをすること、と考えます。

ヒトの最長寿命は120歳くらいだとされています。わが国では100歳以上の者は3万人を越え、90歳以上の者は100万人を越えています。 私は患者さんに、「100歳を目指して生きましょう」とよく言います。 初めは冗談と受け取られ無視されますが、何度も言ううちに次第にその気になってくれます。 何事も努力しなければ実現しません。長寿も然りです。 高齢者に「元気で長生き」の気持ちを持たせれば、患者と医師の人間関係は良好になります。

高齢者では、症状の裏に不安のあることが多く、その不安を取り除くことが大切となります。 治らない病気は気にせぬことが一番です。気にしても、どうにもならないのですから。 よって、病気の話は少しで、病気以外の世間話だけで診察を終えることが、しばしば起こります。 診察時、私はよく患者さんに冗談を言いますが、「先生から元気をもらった」と言って帰る患者さんの後姿を見るとうれしくなります。

老年病専門医は、病気を治すことだけでなく、元気で長生きさせることを目標とします。 抗加齢医学はメチャメチャおもしろい学問です。機会があれば病院見学においでください。