新しいソケイヘルニア根治術『クーゲル法』

 

ソケイヘルニアとは?

一般に脱腸と呼ばれている良性の病気です。一歳未満の乳幼児と中・高年の成人に起こりやすい二つの山があります。しかし、子供と大人では原因が違い、治療法も異なります。
成人ソケイヘルニアは加齢とともに下腹部から足の付け根(ソケイ部)の組織が脆弱になり、その部分からお腹の中にある腹膜が袋状に飛び出してくることによっておこります。そのため、成人のヘルニアの治療では筋膜を補強する手術が必要になるのです。

                                                                    

 

 

 

ソケイヘルニアになりやすい人

40歳以上の男性。男性は女性の5倍以上なりやすいといわれています。

お腹にいつも力がかかっている人(力仕事、便秘、前立腺肥大、肺気腫など)

肥満の方

長時間のたち仕事に従事している人

 

 

ソケイヘルニアの種類

 

ソケイヘルニアの治療

残念ながら手術を受けていただくしか方法がありません。脱腸帯(脱腸ベルト)をつけている方も居られますがこの先一生ベルトをつけなければなりませんし、ベルトをすることによって弱くなった組織の周りがますます弱くなってしまう可能性があります。

 

新しい手術法

組織に緊張をかけない手術方法がここ10数年前から行われるようになってきました。人工材料を用いて弱くなったソケイ部を補強する方法です。人工の繊維で編んだメッシュ(網)を固定して補強するのですが、メッシュの種類、固定する場所、メッシュを入れるアプローチの方法によっていろいろな方法があります。

当院では、クーゲル法という方法で手術をしております。

 

 

傷はたったの3cmです。図のように膨らんでいる部分よりやや上に横に3cmの傷で手術します。

 

クーゲルパッチは補強をする横筋筋膜の内側に敷きこみます。この内側に入れるのがこの手術方法のポイントです。

 

 

クーゲルパッチは形状記憶リングのために、折り曲げてもすぐに楕円の形に戻ります。そのために3cmという小さな傷からこのパッチを入れて、正しく内側で広げることができるのです。

 

袋に穴が開いたときに修復しなければなりません。そのとき、外側からパッチをあてがって補強するのがリヒテンシュタイン法です(左側)。これだと全周性に固定しないとパッチが外れてしまいます。

クーゲル法は内側からパッチを入れて補強します(右側)。お腹の中には腸が入っていますから常時外側に向かって力が加わっています。そのため、パッチの固定は最低限でいいのです。当院では一針だけクーパー靭帯に固定しています。

 

クーゲル法のメリット

  • 腹圧をパッチ固定に利用できるUnderlay graft法である点。
  • 1枚のパッチで、内鼠径輪、外鼠径輪、大腿輪が同時にカバーされ、全てのタイプの鼠径ヘルニアに対応できる点。
  • 鼠径管を開放しないので、鼠径管の持つヘルニア発生防止機能を温存できる可能性がある点。
  • 同じく、鼠径管を開放しないため、この部を走行する神経損傷の危険、それによる術後疼痛が少ない点。
  • パッチ固定は1針程度で済むので、縫合固定による疼痛や、引きつれ感が少ない点。
  • クーゲル法から他の手術に変更できる点。
  • 小さな傷で手術可能。(3cmで可能)
  • 手術時間も30分で終了。
  • 術後に運動制限がない。

 

 

 

 

メリットがこんなにあるのにどうして全体的に手術する外科医が少ないのか不思議に思われるかもしれません。それぞれの手術にいい点、悪い点があります。クーゲル法がもっと大きく普及しない原因は手技が難しいことです。ソケイ部の解剖は慣れていてもクーゲル法の視野は内側からソケイ部を除き見るように視点が違うのです。それに慣れるまで時間がかかります。ただ、一度覚えてしまえばこんなにいい手術はありません。自分が手術するとしたら、迷わずクーゲル法で手術してもらうでしょう。

 

日帰り手術が可能です。

当院では日帰り手術センターにて、手術当日来院していただき、手術後,当日帰宅することが可能です。帰宅された後は何かありましたらすぐにご連絡いただくようになりますが万全の体制で患者様の心配をできるだけ少なくするように勤めています。ただ、手術のあとは心配がなくなるまで入院したいという方もいらっしゃるでしょう。その場合も、ご希望に添える形にしています。患者様の選択肢を少しでも多く提供できるように努力しています。

 

ソケイヘルニアでお悩みのことがありましたらどんなことでもかまいません。すぐ連絡をしてください。

 

函館共愛会 共愛会病院 外科  折原 暁